絶対音感がなくなることってあるの?!なくなったと思う理由とは

絶対音感は、特定の音の高さ(音程)を基準なしに正確に認識する能力を指します。この能力が「なくなる」かどうかについては、いくつかのポイントがあります。絶対音感は、一般的に「一度習得すると衰えない」と考えられていますが、完全に不変ではないこともあります。今回はその理由を解説します。

絶対音感の実態ってよくわからないわ。
身についた絶対音感は一生消えない
結論から言いますと、「身についた絶対音感は一生消えない」とされています。その理由を詳しく説明します。
幼少期の脳の発達と神経回路の固定化
幼少期に絶対音感を習得した場合、その能力は脳の聴覚処理に深く根付いています。この時期の脳は神経可塑性(脳の構造が経験によって変化する能力)が非常に高く、音の高さと特定の音名を結びつける回路が固定されやすいです。この神経回路は一度形成されると簡単には消失しません。それは、たとえその後音楽から離れた生活を送ったとしても、脳内にはその痕跡が残っており、再び音楽に触れると能力が甦ることがあります。
記憶の自動化と無意識レベルでの音の認識
絶対音感を持つ人は、音の高さを言語や記憶の一部として無意識レベルで認識することができます。この自動化された記憶プロセスは、他の記憶(例えば自転車の乗り方や泳ぎ方)と同様に、忘れることが極めて難しいものです。これは音に対する「条件反射」のようなもので、一度学んだ後は意識的に思い出す必要がなく、体に染み込んでいます。


聴覚と脳の密接なつながり
絶対音感を持つ人の脳は、音程を識別する際に特定の領域(主に左半球の聴覚野や言語野)が活性化します。このつながりは生理学的に安定しており、外的な要因で完全に断絶されることはありません。例えば、加齢や健康問題で聴力が低下した場合でも、脳が音名を「記憶している」ため、聴覚そのものが完全に失われない限り、音感の基礎は維持されます。
絶対音感は一種の言語能力と似ている
絶対音感はしばしば言語能力と比較されます。幼い頃に習得した母語は、一生消えることがないのと同様に、絶対音感も音と名前の結びつきが強固に保たれます。音名(ド、レ、ミなど)を「単語」として認識しているため、特定の音を聞くと反射的にその名前を思い出す仕組みが働きます。これは「音楽的な母語」のようなものであり、使わない期間が長くても完全に失われることはありません。
絶対音感が一生消えない理由は、脳の神経回路の固定化、記憶の自動化、聴覚と脳の密接な関係、そして言語能力に似た認識構造という4つの要因によるものです。これらの特性により、絶対音感は持続性が高く、環境や状況の変化によっても失われにくいと考えられます。
絶対音感がなくなったと勘違いする理由
絶対音感を持つ人が、自分の絶対音感が「なくなった」と感じることがありますが、実際には能力そのものが完全に失われたわけではない場合が多いです。そのような「勘違い」を引き起こす理由を説明します。
聴力の低下
加齢や健康問題によって聴力が低下すると、音が聞こえにくくなったり、音の細かいニュアンスを認識する能力が弱まることがあります。絶対音感は音を正確に聞き取る能力が前提となっていますが、聴力そのものが低下すると音程の違いを認識しづらくなります。聴力の問題と絶対音感の衰えを混同してしまい、「絶対音感がなくなった」と思い込むことがあります。
周囲の音の基準が変化している
絶対音感を持つ人は、ピッチ(音の高さ)の微妙な違いに敏感です。しかし、現代の音楽ではピッチがA=440Hz以外(例えば442Hzや432Hz)を基準とする場合があります。音楽の調律や録音機器の設定が微妙に異なる場合、絶対音感の持ち主は「いつもの音」と違うと感じることがあります。調律やピッチの違いに慣れていないと、自分の能力が衰えたと勘違いしてしまうのです。
記憶や練習の不足
絶対音感は幼少期に形成される能力ですが、日常的に音楽に触れる機会が減ると、能力が「鈍る」ことがあります。音と音名の結びつきを使わない期間が長くなると、即座に音名が浮かばなくなる場合があります。しかしそれは音感自体がなくなったわけではなく、単に練習不足で反射的に応答できなくなっただけです。


外的要因による混乱
環境音やノイズ、楽器の音色の違いなど、外的要因が音の認識に影響を与えることがあります。例えば、音の波形が複雑な音色の楽器や曖昧な音(電子音など)は、絶対音感の持ち主でも即座に正確な音名を言い当てるのが難しい場合があります。これにより、「音を正しく認識できない=絶対音感がなくなった」と思い込むことがあります。
絶対音感が「なくなった」と勘違いする主な理由は、聴力の低下や音楽の基準変化、練習不足、外的要因による影響などです。これらの理由は能力そのものの消失を意味するわけではなく、状況や環境を改善することで元の感覚が戻る可能性があります。
なくなってしまった絶対音感を取り戻す方法は?
絶対音感が一度衰えてしまった場合、それを取り戻すためには、継続的な訓練と効果的な方法を用いることが重要です。絶対音感を再び取り戻すための具体的な方法を紹介します。
基本に戻る
ピアノや他の調律された楽器を使って、基本的な音名を再確認します。特定の音を聞いて、それがどの音かを確認する練習を繰り返し行います。音階の練習ではドレミファソラシドの音階を繰り返し聞いて、各音に慣れるようにします。最初はゆっくりと始め、徐々に速度を上げていきます。
聴音トレーニング
ピアノなどの楽器でランダムな音を弾き、その音を聞いて音名を答える練習をします。これを繰り返し行うことで、音の高さに対する感覚を再び鋭敏にします。
絶対音感トレーニングで用いた、和音の認識を使い、音が同時に鳴る和音の響きを聴いて、その構成音を特定する練習をします。これにより、複雑な音の中でも個々の音を認識できるようになります。


規則的な練習
毎日少しずつでも音感のトレーニングを行うことが大切です。短時間でも良いので、継続的な練習が効果的です。絶対音感トレーニング用のアプリやソフトウェアを使用して、日々の練習をサポートすることも有効です。
専門家の指導を受ける
音楽教師や専門家の指導を受けることで、効果的なトレーニング方法を学ぶことができます。個別の指導により、自分の弱点を的確に補強できます。また指導を受けることで定期的に訓練を行うことができ持続されることが期待できます。
絶対音感を取り戻すためには、基本に戻った継続的な練習、聴音トレーニング、規則的な練習、音楽的環境の整備、専門家の指導、そして音楽理論の理解が重要です。これらを組み合わせて実践することで、絶対音感を再び鍛え、取り戻すことができるでしょう。
絶対音感がなくなっていく年齢は?
絶対音感がなくなっていく、あるいは弱くなっていく年齢について具体的な年齢を一概に述べることは難しいですが、いくつかのポイントが関係します。
加齢と聴覚の変化
年齢とともに聴力が低下することは一般的です。特に高音域の聴力が先に低下することが多く、これが絶対音感に影響を与える可能性があります。一般的には40歳以降に聴力の変化が顕著になることがあります。また加齢に伴い、音を瞬時に認識する速度が遅くなることがあります。これは脳の処理速度の低下に関連しています。
継続的な音楽的活動の有無
絶対音感を持つ人でも、長期間音楽活動から離れると、音名を瞬時に思い出す能力が低下することがあります。特に、音楽の演奏や聴音トレーニングを中断した場合、その能力が衰える可能性があります。


健康状態
聴覚に関する病気や耳の疾患が絶対音感に影響を与えることがあります。例えば、メニエール病や突発性難聴などの疾患が原因で聴力が低下することがあります。認知症やアルツハイマー病など、脳に関連する病気が進行する場合も、音の認識能力が低下する可能性があります。
絶対音感がなくなっていく具体的な年齢は一概には言えませんが、加齢や健康状態、音楽的活動の有無が影響を与えることがあります。一般的には、40歳以降に聴力の変化が顕著になることが多いですが、個人差が大きく、音楽活動を続けることでその影響を最小限に抑えることが可能です。
まとめ
身についた絶対音感は一生消えません。「なくなった」と感じるいくつかの理由を詳しく説明してきました。
絶対音感は一生消えない
絶対音感は一度身につくと、脳に形成された神経回路や記憶が深く固定されるため、基本的に一生消えることはありません。加齢や聴力の低下によって音の聞き取りが難しくなる場合はありますが、音名と音程を結びつける能力そのものは残ります。絶対音感は言語能力のように体に染み込んでおり、使わない期間があっても再び音楽に触れると感覚を取り戻すことができます。
絶対音感がなくなったと勘違いする理由
絶対音感がなくなったと勘違いする理由には、加齢や健康問題による聴力低下、音楽の基準ピッチの変化、練習不足による能力の鈍化、複雑な音色や環境音の影響があります。これらは能力の喪失ではなく、一時的な認識の混乱や外的要因によるものです。
絶対音感を取り戻す方法とは
絶対音感を取り戻すには、定期的に音楽に触れることが大切です。音階を聞きながら音名を確認する練習を行い、記憶を呼び起こします。また、ピアノやチューナーなど正確な音程を出せる楽器を使って、音感を再調整することが効果的です。焦らず継続することで感覚が戻りやすくなります。


なくなったのではなく、少し衰えたと表現した方が良いでしょう。絶対音感は一生消えない聴力の才能です。
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音感は“才能”ではなく、“育てられる力”。
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