絶対音感、相対音感の違い。ピアノ講師から見た、それぞれの役割とは
絶対音感とは、他の音と比べなくても、突然きこえた音の音名が分かる能力のことです。
また、相対音感は、比べるという意味で、前音との幅を見積もって、音をあてること、音階の枠組みを利用して、音をあてることを言います。この2つの真逆の音感、音楽活動の現場ではどのような役割があるのでしょうか。解説していきます。
絶対音感がある人の特徴
絶対音感とは他の音とくらべなくても、突然きこえた音の高さが、「あの音はソ#だ」などと、分かる能力のことです。高い音から低い音まで、ピアノの鍵盤すべてが分かるレベルが絶対音感です。絶対音感では、チャイムの音や機械のモーター音のような生活音でも、音名で答えることができます。
絶対音感の見分け方
絶対音感は基準音がなくても正確に音名を当てられます。その音域はピアノ88鍵、白鍵、黒鍵全てに及びます。また、音の高さが違う音もその響きから音名で言い当てます。これは音固有の響きである「クロマ」と言い、絶対音感をもつ人は「クロマ」を聴き取ることができます。
絶対音感のメリット
聞こえた音が音名で分かるので、耳できいただけの音楽を、楽器で演奏したり、楽譜に書きおこしたりすることができます。さらには耳が良いので、演奏にたいへん有利です。
なぜ絶対音感がつくの?
絶対音感が生まれつきある人は20万人に1人というデータがあります。ほとんどは絶対音感が身につくトレーニング(ピアノを習うなど)をしたからです。残念ながら絶対音感は放っておいてはほぼつきません。(全体の1%以下)習得には適切なトレーニングを6歳半までに(4歳9ヶ月以下がベスト)行うことで身につける事ができます。にトレーニングを行うことで、絶対音感はほぼ確実に身につけることができる能力です。上記で述べたように、適応年齢までに正しいトレーニングを受けることです。
絶対音感の特徴をおわかりいただけましたか。絶対音感は長い間、そのめずらしさと、身につける方法が分からないという神秘性から、注目を集めてきました。しかし、トレーニングで習得可能とは驚きです。
相対音感がある人の特徴
相対音感は絶対音感の対極の関係にあります。相対音感では1つの音と別の音がどのくらい離れているかを認識できます。ゆえに音程の認識のために、基準となる音が必要になります。 たとえば、「ド」の音を聞いた後で、どれが「ソ」の音になるのかがわかるのが相対音感になります。
相対音感の見分け方
相対音感は歌声や楽器が奏でる音を聞いたときに即座に音名を答えられないものの、基準となる音を最初に聞いた上で音名が答えられるという能力です。 このような能力のある人を相対音感がある人と言います。
相対音感のメリット
音の幅を瞬時にわかる相対音感は、移調を簡単に行えます。つまりどんな音でも次への幅が分かるので、与えられた音で音楽を作っていくことができます。絶対音感で は、音名で分かるので音が少しズレただけで、なんとも気持ち悪く、理解が困難になる場合があります。しかし、相対音感はじめて聞く曲やコード進行でも、ある程度この先の展開を予想して歌ったり楽器を弾いたりすることができます。メロディーだけ聴いて、コード進行がわかるのも相対音感がしっかり備わっていることでのメリットと言えるでしょう。
なぜ相対音感がつくの?
相対音感については、思春期頃までのトレーニング(ピアノを習うなど)でつくと言われています。しかし相対音感を身につけるのに、実質、年齢の上限はありません。 おとなの方でも、優れた相対音感を得ることは可能です。
相対音感”とは、その文字通り、相対的に音程の違いを感じ、理解できる能力です。音楽で大切な、音の違いや音量バランス、楽器のそれぞれの音の違いなど、音楽に関する総合的な感覚が優れているとも言えます。
2つの音感、違いと役割
音楽をする上で、それぞれの違いと役割を考えてみました。
絶対音感と相対音感の違い
絶対音感と相対音感の説明は前述した通りです。その上で音楽においてのそれぞれの使い方の違いを比べてみました。
絶対音感
・正しく音を聞き取れる
・きいた曲を正確に楽器で再現できる
・聴いた音を楽譜にできる(採譜作業ができる場合)
相対音感
・ズレた音でもその音から曲を作っていける
・移調が簡単にできる
・同時に和声感(ハーモニー)も備わっていることが多く曲を展開していける
それぞれの役目
3-1を踏まえると、音楽の役割がわかります、同時にどちらも素晴らしい能力であり、どちらが優越の話でないことがわかりました。正しい音が分かること(絶対音感)、曲全体の調性感、ハーモニーが展開できること(相対音感)、音楽にはどちらもとても有益な能力です。
音楽をする上で、どちらが有効的か
つまり、どちらも有効的で持っていて損はない素晴らしい能力です。ただ、絶対音感には身につけられるタイムリミットがあり、同時に音がズレているときの困難さ、気持ち悪さはついてまわる試練かもしれません。大切なのは慣れですね。
音楽は理屈じゃないニュアンスを感じる不思議な力をもっています。その繊細な違いや変化を聴き取る音感は総合的な力があると良いということです。
音楽にとって何が1番大切なことか
3でお伝えしたように「音感」は音楽に重要なことです。絶対音感、相対音感、それぞれの特徴を音楽で生かせる場面に当てはめて、具体的に解説します。
感じ取れる耳の重要さ
音楽学習に重要な能力の中の1つが「音楽を聴き分ける力」、いわゆる「音感」です。音楽を聴き分ける力とは音楽にかかわるさまざまな要素を認知する力のことであり、それは絶対音感、相対音感のような素晴らしい音感があるから感じるものです。
音楽を作り上げる役目
音楽にはリズム、メロディー、ハーモニーの3要素があります。メロディーは絶対音感で聴き取り、ハーモニーは相対音感で聴き取るなど、それぞれの役目を発揮します。
聴覚の才能を有効に活用すること
音楽を聴き分ける力は1~2歳頃から少しずつ発達し始め3歳頃から5歳頃にかけ急激に発達していきます。つまり「音楽を聴き分ける力」が「手指の器用さ」「楽譜を読む力」よりも早い段階で発達することがわかります。この発達特性を考慮すると「音楽を聴き分ける、音楽を認知する」ための学習は、早い段階から積極的に行う事が子どもにとって楽しくストレスのない音楽学習の方法だといえるでしょう。
「音感」という才能は、音楽を豊かにする才能なんですね。
絶対音感、相対音感、違いとそれぞれの役割のまとめ
絶対音感、相対音感の違いを説明し、それぞれの役割をお話ししました。簡単にまとめてみました。
絶対音感、相対音感、違いを簡単に
絶対音感は、比べなくても音が確実に分かる能力、相対音感は基準の音から次の音の高さが分かる能力。
それぞれの役割とは
絶対音感はメロディーなど音を確実に再現できることに優れ、相対音感は1つの音から音楽を作っていくことができます。それぞれの聴き取り方は違っていても、音楽にとってどちらも大切な役割があります。
音楽に大切なこと
音楽には細かな変化やニュアンス、リズムやハーモニーなど様々な要素から成り立っています。その助けをしてくれるのが「音感」です。音楽活動にとって、どちらがいいという話ではなく、有効な場面でその音感を使うことが大切です。
音楽を職業にしている私からすると、日々耳を使い様々な情報(音楽)を聴き取っているわけです。人間の才能はすごいもので、日々耳が進化していくのがわかります。(老化現象は除外苦笑)いつからでも音感(相対音感)は伸ばすこともできます。絶対音感、相対音感をお持ちの方はぜひ音楽に役に立てて欲しいと思っています。また、そうでなくても音楽は楽しめることを覚えておいて下さい。