現役講師伝授!保育士さん、ママにも試して欲しい正しいリトミックのやり方。
「リトミック」ってお遊戯遊びかな?リズムゲーム? そんなイメージがあるかもしれません。「リトミック」を取り入れた幼稚園や保育園、そして子どもの習い事としても増えてきている今、それは正しい(効果のある)「リトミック」をしているのか疑問に思う時があります。今回は保育士さん、子育て中のママにもできる正しくわかりやすい「リトミック」のやり方を現役認定リトミック講師がご紹介します。
リトミックとは?
リトミックってよく聞きますが、本当の内容を的確に知っている方は少ない気がします。
歴史や、本当のリトミックをお伝えしますね。
リトミックの歴史
今から100年以上前、スイスの音楽教育家・作曲家、「エミール・ジャック=ダルクローズ」によって創案された音楽教育法です。
本当のリトミックとは
ピアノや楽器の生演奏を使用しないリトミックや、C D音源を使うリトミックなどを見かけたりしますが、ダルクローズが提唱したリトミックは「生演奏」が大前提です。
リトミックの習える場所
以前よりリトミック教室の多くなってきたと思います。大手音楽教室や、個人ピアノ教室、幼児教室などでもリトミックレッスンを展開している教室が増えました。ポイントは、上記の「生演奏」でダルクローズリトミックを教えてもらえるか、どうかです。
リトミック講師資格について
リトミックの指導は、資格がなくても行うことはできますが一定の資格を取得することで理解が深まり正しいリトミックを行うことができるようになります。また、リトミックの創設者ダルクローズが認定する、ダルクローズ・リトミックでは国際サーティフィケイト以上で、あらゆる年齢層の音楽専門家以外の人々への「リトミック」「ソルフェージュ」「即興」の指導をできることになっています。
リトミックのやり方
では、資格がない方でも現場で有意義なリトミックをするためのやり方を具体的にお話しします。
即時反応
言葉の通り、その場で考え反応する活動の事です。脳の「あっ!はっ!」体験です。音が止まると活動も止める、リトミックの課題に対し体で反応する、などの活動です。
ダイナミクス
よく使われるサブジェクトです。空間を使い体で音の大きさ、エネルギーを感じます。簡単なようですが、演奏に気をつけならなくてはなりません。また、最初はいいのですが「アリさんになろう!」などと声掛けをしてしまうとせっかくの子供の想像力が大人の指示によってなくなってしまうのできをつけましょう。演奏に対して「これは誰かな?」と答えを子供に導き出してもらうことが大切です。
ビート感、 拍子
音楽にはビートがあります。これは人間の心臓の鼓動と同じです。絶え間なく続くビート感を味わいながら、音楽を感じることが大切です。ビートを感じたら拍子を感じ、次第に違いを感じる課題に進歩します。
リズム・カノン
幼稚園、保育園の現場では手遊び歌をよく歌うと思います。その中にはリズム、カノンの課題が多く含まれています。その手遊び歌はよくできているな、と感心するものばかりです。課題としては、リズム打ち、マネっこ遊びすることで記憶して実行、カノンの要素が含まれます。例としては♪こぶたぬきねこ、♪やさいのうた、などです。どんどん歌遊びでリズム、カノンを使って体を動かして下さい。
長調、短調の聴き分け
音楽には、「明るい」「暗い」と言われる調性があり、その聴き分けの課題があります。長調、短調の演奏を聴きどんな気持ちかを表現します。また、リトミック中の演奏も楽しい場面、悲しい場面で演奏を工夫する必要があります。
リトミックはただなんとなくの音楽遊びではないことがわかっていただけたと思います。
ご紹介したのは簡単にできるリトミックサブジェクトの1例にすぎません。
年齢別リトミックの例
では、実際に上記の課題を使って年齢別にどんな活動ができるかご紹介します。
0歳児(保護者や保育者が1人1人に付きそうことが望ましい)
即時反応→すずを鳴らす、止める
ビート感→すずをビートに合わせて鳴らす(早いビート、遅いビート)
ダイナミクス→パラバルーンやスカーフをふる、もしくは見る、体をさわる
1歳児
即時反応→歩く、止まる
ビート感→すずをビートに合わせて鳴らす(早いビート、遅いビート)
ダイナミクス→真似っこ遊びで大きく、小さくなってみる
リズム→言葉に合わせ手を叩く
2歳児
即時反応→歩く、止まる、走る、止まる
ビート感→スティックを叩きビートをとる(早いビート、遅いビート)スティックを打つことで裏拍を感じる
ダイナミクス→真似っこ遊びで大きく小さくなってみる。演奏で想像し自ら模倣する
リズム→言葉に合わせ手を叩く、リズムの連続
3歳児
即時反応→歩く、止まる、走る、止まる、スキップ、止まる
ビート感→スティックを叩きビートをとる(早いビート、遅いビート)スティックを打つことで裏はくを感じる。足、手で違うビートを打つ。
ダイナミクス→真似っこ遊びで大きく小さくなってみる。演奏で想像し自ら模倣する
リズム→言葉に合わせ手を叩く、リズムの連続
長調、短調に聴き取り→楽しい、悲しいなどの感情と表現
4歳児、5歳児
即時反応→歩く、止まる、走る、止まる、スキップ、止まる、ジャンプ
ビート感→スティックを叩きビートをとる(早いビート、遅いビート)スティックを打つことで裏はくを感じる。足、手で違うビートを打つ。
ダイナミクス→真似っこ遊びで大きく小さくなってみる。演奏で想像し自ら模倣する
リズム→言葉に合わせ手を叩く、リズムの連続、スティックでリズムを打つ。足、手で異なったリズムを打つポリリズムの実施
長調、短調に聴き取り→楽しい、悲しいなどの感情と表現。
課題とねらいをもとに子供達が喜ぶネタや歌を考えていきます。リトミックは奥深いですね。
奥深いリトミック
課題はわかってもそれを子供が喜ぶかたちで展開していくのは難しいですよね。そこで例を使って解説します。
必ずサブジェクト(目的)を念頭に活動をする
上記の年齢別課題を目標に、活動を決めます。例えば
・遠足に行こう
・動物園に行こう
・お散歩に行こう
そこまでの道のりで即時反応、ダイナミクスなどが多く盛り込めます。また、物語風に登場人物になりきり長調、短調の聴き取りを自然に行うことができます。
ポイントは、突然課題をこなそうとするのではなく、子供の興味のある事例からお話を展開していくように、音楽でつづることが大切です。
進め方のポイント
最初は1つの課題から始めますが、次第に1度に複数の課題をこなすよう進めていきます。例えば、「ゾウさんがパオーンってないているよ、やってみよう!」するとここにはダイナミクスとリズムの課題が盛り込まれています。このように、慣れてきたら子供の様子を見て難易度を上げていきましょう。
演奏の重要さ
1-2でお伝えしたようにリトミックには生演奏が不可欠です。できたら音域の広い楽器であるピアノを使うと良いです。リトミックでの演奏はできれば初心者ではなく中級者以上が好ましいです。即興演奏が得意、演奏で表現するのが得意な方は有利かもしれません。演奏は1人よがりなものではなく、はっきりわかりやすく体が動きたくなるパワーを感じる演奏を心がけましょう。よく、「歩きましょう」のテーマでド、ソ、ド、ソと4分音符を刻む演奏がありますが、それでは途中で活動の推進力が失われてしまいます。そんな時、3連符を入れたり付点のリズムを入れることで解消されます。このように、演奏には一定の技術が必要です。
リトミックのやり方のまとめ
リトミックを幼稚園や保育園、自宅でやりたい方に向けてお話ししてきました。少し難しい部分もあったかもしれません。しかし、リトミックの正しい課題の意味とアイディア次第であなたもリトミックができるかもしれません。
幼稚園、保育園、家でする時の注意点
リトミックは空間で体を動かしエネルギーを感じる活動です。広いスペースで行いましょう。また、うまくいかなくても何度も活動することで楽しくなることもあります。リトミックに終わりはありません、何度でも楽しいのがリトミックです。子供を認め、褒めながらレッスンを進めて下さい。
目的を持って行うこと
目的がわかっていないと、指導者の活動の進め方や演奏をどのようにしていいのかがわからなくなってしまいます。リトミックに不慣れな時はとくに、カリキュラムをたてると見失うことはありません。ただ漠然とリトミックをするのではなく指導者もしっかりとした活動目的をたてましょう。
いかがでしたか。正しいリトミックをしてこそ、本物の力がつくリトミック。どんどん正しいリトミックを広げ、子供たちの才能を引き出していただきたいと思っています。