絶対音感と記憶力の不思議な関係 音を覚える力が記憶力を鍛える理由とは?

「絶対音感」という言葉を聞くと、音楽に関わる特別な能力を持った人たちを思い浮かべるかもしれません。しかし、この能力が実は「記憶力」と深く結びついていると聞いたら、どう思いますか?絶対音感は単に音を聞き分ける力ではなく、聞いた音を正確に記憶し、それを脳内で再現する能力でもあります。この特性が、音楽だけでなく、日常生活の記憶力や情報処理能力にまで影響を与える可能性があるのです。では、なぜ絶対音感を持つ人は記憶力が優れていると言われるのでしょうか?その秘密を探ると、音と記憶の驚くべきつながりが見えてきます。この不思議な関係について、音楽の領域を超えた視点で紐解いていきましょう。

絶対音感と記憶力に関係があるの?
絶対音感ってなに?
絶対音感とは他の音とくらべなくても、突然きこえた音の高さが、「あの音はソ#だ」などと、分かる能力のことです。高い音から低い音まで、ピアノの鍵盤すべてが分かるレベルが絶対音感です。絶対音感では、チャイムの音や機械のモーター音のような生活音でも、音名で答えることができます。
絶対音感と相対音感の違い
絶対音感とは、基準音なしに音が分かる能力、相対音感とは、基準音をもとに音を判断する能力です。相対音感の「相対」とは、「比べる」という意味です。前音との幅を見積もって、音をあてること、音階の枠組みを利用して、音をあてること等は、相対音感です。 絶対音感と相対音感は、音の判断の仕方がまったく違います。どちらが優れているといった話ではなくどちらも音楽活動をおこなう上で、重要な能力です。
絶対音感のメリット
聞こえた音が音名で分かるので、耳できいただけの音楽を、楽器で演奏したり、楽譜に書きおこしたりすることができます。さらには耳が良いので、演奏にたいへん有利です。
なぜ絶対音感がつくの?
絶対音感がつくのはトレーニングをしたからです。残念ながら絶対音感は放っておいてはほぼつきません。(全体の1%以下)習得には適切なトレーニングを6歳半までに(4歳9ヶ月以下がベスト)行うことで身につける事ができます。


絶対音感って習得できるの?
適切にトレーニングを行うことで、絶対音感はほぼ確実に身につけることができる能力です。上記で述べたように、適応年齢までに正しいトレーニングを受けることです。
絶対音感は長い間、そのめずらしさと、身につける方法が分からないという神秘性から、注目を集めてきました。しかし、トレーニングで習得可能とは驚きですね。
絶対音感を持っていると記憶力が良くなる理由
絶対音感という言葉を聞くと、音楽の才能として特別な能力をイメージするかもしれません。しかし、絶対音感は単なる音楽スキルにとどまらず、脳の働きや記憶力にも大きな影響を与えることが知られています。
音の正確な識別が記憶の精度を高める
絶対音感を持つ人は、音を細かく識別し、それを正確に記憶する能力に優れています。たとえば、聞いた音の高さを瞬時に判断して記憶することで、脳の記憶処理が鍛えられるのです。このトレーニングは、音楽だけでなく、音声や日常生活の細かな記憶にも応用されます。細部に注意を払う能力が高いため、情報を正確に覚える力が自然と向上します。
聴覚と視覚の連携が活性化する
絶対音感を持つ人は、特定の音に名前や記号(ド、レ、ミなど)を即座に結びつけることができます。このような「音」と「情報」の結びつきは、音楽を超えて他の記憶領域にも影響を与えます。たとえば、言葉やイメージと音を関連付ける力が強くなるため、暗記や学習の効率が上がります。この連携は、脳全体の記憶処理を活性化させる効果があるとされています。
聴覚記憶が鍛えられることで情報処理能力が向上する
絶対音感の訓練は、耳で聞いた情報をそのまま覚える「聴覚記憶」を特に強化します。たとえば、音の長さや高さ、順序を正確に記憶する力が強いため、言語学習やスピーチ、プレゼンテーションの際に聞いた内容をすぐに再現する能力が高くなります。音を通じた情報処理のスピードが速くなることで、他の分野でも優れた記憶力を発揮するのです。


脳の記憶を司る領域が活性化する
絶対音感を持つ人は、音楽を処理する脳の部位(主に左半球の聴覚野)が一般の人よりも発達しているとされています。この領域は、記憶を司る脳の他の部分とも密接に関連しているため、音楽的な活動を通じて脳全体が刺激を受け、記憶力が向上する可能性があります。また、絶対音感の特訓は幼少期から行われることが多いため、脳の可塑性が高い時期に鍛えられることで、記憶能力の基礎がしっかり形成されるのです。
絶対音感は音楽の才能として注目されがちですが、その背景には脳全体の記憶力や情報処理能力を高める多くの要因が潜んでいます。音楽を通じて得られるこれらの恩恵は、日常生活や学習、仕事においても大いに役立つでしょう。
絶対音感の可能性
絶対音感は音楽に留まらず、様々な分野で役に立ちます。その可能性は大きく期待が持てます。
音楽の才能を伸ばす土台となる
絶対音感は、音楽の分野で大きな武器になります。音を聞いた瞬間に正確な音名や高さが分かるため、楽譜の読み書きや演奏スキルがスムーズに習得できます。また、音を記憶する力が優れているため、楽曲を耳コピしたり即興で演奏する能力も高まります。この特性は、作曲や編曲、演奏など、音楽のあらゆる領域で活用される可能性を広げてくれます。
語学学習やコミュニケーション能力の向上
絶対音感を持つ人は、音の細かな違いを聞き分ける力に優れているため、語学学習にも役立つと言われています。特に音の抑揚やアクセントが重要な言語(例えば中国語やタイ語)では、この能力が大きな助けになります。また、人の話すトーンやニュアンスを敏感に感じ取れるため、コミュニケーションの場面でも相手の気持ちや意図を察する能力が高まる可能性があります。
聴覚に関連する職業での活躍
絶対音感は、音を扱う職業で特に有用です。たとえば、音響技術者やレコーディングエンジニアとして、微細な音の変化やバランスを捉えるスキルが活かされます。また、医学分野では、聴覚に関連する研究やリハビリテーションにおいて、絶対音感が有利になることもあります。音楽療法士として、患者の反応を音で読み取る能力にも役立つ可能性があります。
記憶力や認知能力の向上
絶対音感を持つ人は、音を記憶する力が強いため、情報処理能力や記憶力が高い傾向があります。この能力は、音楽だけでなく、日常生活や学業、仕事の場面でも活用されます。たとえば、講義や会議で聞いた内容を正確に覚えたり、複雑な指示を迅速に理解することが得意です。さらに、この記憶力の高さは他分野での創造的な活動にも応用され、発明や芸術的な成果につながる可能性を秘めています。


絶対音感は音楽の才能として知られていますが、それだけにとどまらず、さまざまな分野で活躍する土台となる能力です。この特性をうまく活用することで、音楽だけでなく多様な可能性を切り開くことができるでしょう。
絶対音感は習うことができる
いかがですか?絶対音感を身につけたい方、そうでない方いるのではないでしょうか。続いては、身につけるための適切な方法と時期、期間などをお話します。
適切なスタートのタイミング
人は誰でも絶対音感を身につける可能性を持っていますが、成長とともに、その可能性を失います。人はありあまる可能性を持って生まれながら、一定期間、それを使う環境にないと、「それは不要な能力である」と判断し、その能力の発達を止めてしまいます。より必要な能力を伸ばすための仕組みです。身につけられる時期が限られている能力は、絶対音感以外にもあります。母国語の獲得も、その1つです。年齢が高くなってから学んだ言語は、母国語のようにはなりません。これは聴覚神経の発達に関連すると考えられています。
幼少期からの取り組み
上記のことから、絶対音感を身につけられるのは、6歳半までです。その年齢を過ぎると、トレーニングをしても絶対音感に到達することはありません。
正しい習得方法
絶対音感は適応年齢内に、適切にトレーニングをおこなえば、ほぼ確実に身につけることができる能力です。この適切なトレーニングがポイントです。適切ではないと、前述したように、凸凹とした聴き取りが身についてしまい、かえって音が窮屈になりかねません。


身に付くまでの時間
早いお子さんでは3ヶ月から半年で習得する方もいます。平均すると1年半から2年以内に習得することができます。
習得には一定の制限がある絶対音感。しかし、才能を引き出す期間のリミットがあるなら試してみたいとも思いますよね。
まとめ
絶対音感と記憶力は大いに関連していて、その才能は様々な能力を発揮することがわかりました。簡単にまとめてみます。
絶対音感を持っていると記憶力が良くなる理由
絶対音感を持つ人は、音を正確に聞き分けて記憶する力が優れているため、脳の記憶処理が鍛えられます。音楽を聴いて瞬時に音名を覚えたり再現する習慣が、記憶力や情報処理能力の向上につながるのです。また、音と情報を結びつける能力が高いため、学習や暗記の効率も良くなります。このように、絶対音感は音楽以外の記憶力にもポジティブな影響を与えます。


絶対音感の可能性
絶対音感を持つことで、音楽の分野だけでなく、語学学習やコミュニケーション、音響技術や音楽療法など幅広い分野で活躍する可能性が広がります。音を正確に聞き分ける力は、記憶力や情報処理能力の向上にも寄与し、創造性や認知力を高めるきっかけにもなります。この能力は、多様な場面で新しい可能性を切り開く力となるでしょう。
絶対音感は習うことができる
絶対音感は、幼少期から適切な訓練を受けることで習得することが可能です。特に3~6歳の間は脳が音の高さを認識する能力を育てやすい時期とされ、この時期に音を聞き分けたり音名を結びつける練習をすることで身につけやすくなります。ただし、成人してからでは習得が難しいため、早い段階でのトレーニングが重要です。
絶対音感は音楽だけでなく、記憶力や学習、創造性など多くの可能性を広げる特別な能力です。幼少期からの適切な訓練で習得可能なため、音楽を楽しむ第一歩としてもぜひ挑戦してみてください。
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きっとお子さんの「聴く耳」と「感じる心」が、自然に育っているはず。
音感は“才能”ではなく、“育てられる力”。
親子で笑顔で楽しめば、その力は必ず芽を出し、花開きます。